ある郵便局で、「年金をかけるなら是非当支店をご利用下さい」という形で頭を下げられた。元公務員である郵便局職員にしては珍しい態度だ。
このように郵便局を始めとする各金融機関は独自の年金について、掛金を徴収することに全力を上げている。それには理由がある。すなわちインフレ経済が迫ってきているのだ。
インフレとは物価高又は貨幣価値の下落を意味する。その逆にデフレとは貨幣価値が高すぎて、人々がなかなか貨幣を手放さない状態を指す。商品の価格が下がるから、人々は消費を先延ばししようとする。要するに不況だ。現在の日本はこのデフレ経済にあるといえる。
デフレ下では、例えば「老後に月額一人二十万円支給されます」と聞けば条件の良い年金だと解釈する人が多い。貨幣価値が高いから、月額二十万円でも高額と映る。
しかしインフレになると、例えば大根一本が二千円とか、或いは平均月給が二百万円などの現象が起きる。その際の年金月額二十万円は、当然ながらデフレ下の二万円程度の価値しか無い。年金は契約により支給の「額面」が決まっているのに対し、インフレ経済では貨幣価値が下落するからだ。例えばデフレ下で年金保険料を支払い続けた人が、支給の時にインフレになっていれば、損をする。
これを逆に言えば、デフレ下など、貨幣価値が高い時に保険料を預かり、そして支給の時にインフレになった場合、郵便局などの年金運用機関は得をする。結論から言えばインフレ下では借金や預り金をした者が得をする。
米国トウモロコシの不作など、昨今では物資不足、言い換えればインフレ要因がヒタヒタと迫りつつある。そんなインフレ懸念の中で、デフレ下の金銭感覚で年金の保険料を支払い続けることは、理論上、愚かな行為だと言わざるをえない。その逆に住宅購入など高額の耐久消費財の購入に向け借金をすることは将来得となる。借金の額面は変わらないのに、インフレ下では貨幣は手に入れやすくなるから、借金の返済が楽になるからだ。